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稀音家六四郎 ご挨拶Message from Rokushiro Kineya VI

稀音家六四郎


皆様 新年明けましておめでとうございます。

昨年はコロナ禍で大変な一年となりましたが、本年は明るい年になる様切に願っております。

昨年秋に長唄協会特別公演演奏会で、「力」を演奏させて頂きました。
稀音家てれびでアップ致しましたので、是非ご視聴くださいませ。

令和三年 一月吉日

長唄「力」解説

この曲は大正十二年八月、稀音家浄観が作詞者の高橋箒庵と伊香保で避暑滞在をした折に作曲されました。
当時、長唄研精会は最全盛の時でしたが、この年九月の関東大震災の為この新曲の初演はだいぶ後になりました。
作詞の高橋箒庵は浄観と親交のあった三井系の実業家で、茶道に精通し茶道関係の著作が多々あります。
長唄の作詞も、伊香保八景・琴の功・笑・白露・影法師・芦の葉・仏法僧・蛙・酒・松の寿・春雨などあり、何れも浄観が作曲しております。

「力」は本調子、悪役の蜘蛛の登場で始まります。蜘蛛は不気味な感じの昆虫ですので大薩摩など従来の手を使い蜘蛛の性格を表現しています。
次に登場する蝉は芝居仕立で強い性格を表し、蝉の鳴き声を表現した旋律も出てきます。
曲は二上りに変わり、しっとりとした調子で白蝶の出となります。
二上り後半でこの弱々しい蝶が網にかかってもがく様となり、本調子に変わって蜘蛛の出となります。
獲物を掴み 〽奥の方へぞ入りにける… で蜘蛛と蝉と蝶の物語は終わります。
次いで落ち着いた感じの旋律で、
「この物語の例のように力の強い者は弱者に対し優越であるが、この世は因果応報の世界でもある。それは痛ましいが又面白いとも言える。」
ということで終曲となります。
作曲は擬人化した登場者の性格を巧みに表現し、洒落た作風で結論へもって行く佳曲です。